あなたが私にキスをした。
「トーコちゃん」
暖炉を見つめてぼんやりしていた彼女に声をかけると、トーコちゃんはゆっくりと僕の方を振り返った。
似ている。
レイカさんに、とても、よく。
「あ、ユヅキくん」
「最近、ちょっとさみしそうだね」
「そんなこと・・・」
「兄貴が忙しそうだから?」
図星か。
このところ、兄貴は雪まつりに向けて、図面描きや、担当者との打ち合わせに追われている。
「ちょっと買い物に付き合って欲しいんだ。一緒にきてくれる?」
「いいけど、トキワに聞いてみなきゃ」
「どうして?」
「心配すると、いけないから」
「それなら、俺から伝えておくよ」
トーコちゃんは不安そうに頷いた。
・・・どんだけ兄貴に惚れてるんだよ。
なんだか無性にいらいらした。
兄貴は兄貴で
「トーコちゃんと出かけてくる」
なんて言ったら、露骨に嫌な顔をしてみせた。
でも、最近兄貴が仕事ばっかりで寂しくしてるからって言ったら、渋々承知したようだった。