あなたが私にキスをした。
冬の公園は人気がなくてとても静かだ。
遠くの道路を次々と車が過ぎていくのをぼんやり見つめていると、空から白い雪がぱらぱらと降り始めた。
「・・・雪、降ってきちゃったね」
「あ、さ、寒いよねっ!これ、返す・・・」
そう言ってストールを俺の首に巻きなおそうとするトーコちゃんの顔が近くて
俺は反射的に、
くちびるを、重ねてしまった。
「――ねえトーコちゃん、俺と付き合ってよ」
「え…?」
トーコちゃんはぽかんと口を開けて、俺のした行動や俺の言ったことばの意味を必死に理解しようと思考をめぐらせているようだった。
「そ…、れは、無理です」
「どうして?兄貴のことが好きだから?」
「…っ!!」
素直な人だ。
その素直すぎる反応に、胸がズキンと痛んだ。
ちょっともてあそぶだけのつもりだったのに、なんだか妙に胸が苦しい。
「トーコちゃんさ、レイカさんの妹だって嘘なんでしょ」
俺がそう言うと、トーコちゃんはなにかを言おうとして…でも何を言っていいかわからずに、口をぱくぱくとさせていた。
「いいよ、もうわかってるから」
「い、いつから?」
「そもそも、レイカさんには兄妹はいないって前に兄貴が言ってたし」