あなたが私にキスをした。
――side トーコ
「トーコ、ユヅキと何かあったのか」
「べつに、なにもないよ」
「それならいいけど」
トキワが不審に思うのも無理はない。
あの日――、
ユヅキくんが私にキスをした日から私は彼を避け続けている。
「今日は雪まつりだからな。俺は先に会場に行かなきゃないから、トーコはあとでユヅキと来いよ?」
「…うん」
本当はトキワと一緒に行きたいけど、早朝から作品作りをして、日中には実演もすることになっていると言っていた。
私がいると、きっと仕事の邪魔になってしまうから我慢しなくちゃ。
いってきます、と玄関を出るトキワを、がんばって作った笑顔で送り出した。