あなたが私にキスをした。
「そろそろ氷彫刻の展示コーナーに行ってみようか?夕方からのライトアップが綺麗だって、兄貴が言ってたし」
ユヅキくんに言われて、私はこくんとうなずいた。
はやく、トキワの作品が見たい。
――トキワに会いたい。
「・・・まいったな」
「え?」
「だってトーコちゃん、急に恋する女の子の顔になっちゃうんだもん。さっきまで俺といるときは、もっと子どもの顔だったのにさ」
「こ、子どもって、ひどい・・・」
落ち込む私を見て、ユヅキくんは意地悪に笑った。
「悔しいな、また俺の負けか」
「・・・負け?」
「そう、俺の欲しいものは全部兄貴が持って行っちゃうんだ。ガキの頃から、いつもそう」
「レイカさんも?」
私の質問に、ユヅキくんは少し驚いたあと、優しく笑った。
「よくわかったね、大正解」
そうか、だから――。
私はようやく納得した。
だからユヅキくんは、こんなにも私に執着していたのか。