あなたが私にキスをした。

「気づいたら、本当に好きになってた」

「うん」

「俺じゃ、どうしてもだめかな」

「うん・・・どうしても、ダメなの」



私はきっぱりとそう言った。

わかってる。

トキワにはレイカさんという婚約者がいて、トキワはまだその人のことが好きで、これが報われない恋だって、わかってる。




――わかってるけど。





「好きだから、そばにいたいの。自分が傷つくことより、傷ついているトキワを見ている方がずっと辛い」



はじめてトキワに会った時、トキワは独りぼっちで泣いていた。

そんな彼を見て、助けたいと思ったんだよ。

だから、私に命が宿った。

きっと、レイカさんを想うトキワの強い気持ちが、私にものりうつったんだよ。

だから、どんなに傷ついても、どんなに残酷な運命が待っていたとしても。




私が、トキワを助けなきゃ。

愛しているから、そばにいなくちゃ。






「トーコちゃんは、強いね」



ユヅキくんはそう言って、私に微笑んでくれた。

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