あなたが私にキスをした。
トーコと手をつないで、展示コーナーを出る。
もうすっかりあたりは暗くなっていて、雪像もそれぞれにライトアップされて日中とは違った美しさを感じさせた。
ユヅキから、「先に帰るね、二人でごゆっくりどうぞ」というメールが入っていた。
この前まであんなにトーコを口説こうと必死だったくせに、よくわからない奴だ。
でも、今日ふたりが一緒に行動することを密かに心配していた僕としては、ほっとしたのが正直な気持ちだった。
「そろそろ帰ろうか」
「そうだね、・・・あれ?」
トーコが、遠くをじっと見て動きを止めた。
僕もその視線の先に目をやる。
さきほどまで僕たちがいた展示コーナーの入口に、人影が見える。
細身の、若い女性だ――、
それも僕がよく知っている。
「れ・・・い、か・・・」