あなたが私にキスをした。

立ち尽くす僕をみかねて、トーコが走り出した。

それを見て、ようやく僕も動き出す。




考えるのは、あとだ。

今はとりあえず彼女に会わなくては。




「トキワ、こっち!この中に入ったっ」



息を切らして、トーコが雪でできた巨大迷路を指さした。



「おい、ちょっと待て…」




言いかけた僕を無視して、トーコはその中へ姿を消してしまった。


入口の看板に『本日の営業は終了です。補修を行っていないため、危険ですので中に入らないでください』と書かれている。




今日はあれだけ天気が良かったんだ、雪の壁だって溶けかけて崩れてくるかもしれない。

僕は慌ててトーコのあとを追った。

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