あなたが私にキスをした。




暗闇の中の迷路は思った以上に困難で、道に迷うのは一瞬の出来事だった。

どのくらい彷徨っただろう、いつまでたっても迷路を抜け出せる気配はない。




「トーコ!!」





声を出してみても、返事がない。

ちくしょう、もっと早く追いかけていたら。

考えても仕方のない後悔が、胸をよぎった。



「トーコ!!!」



ダメもとで、もう一度大声を上げてみた。




「…トキワ!」




どこからか聞こえる、トーコの声。




やった、近い!




「トーコ、どこにいる!?」

「ここ、ねえ、わかる?」

「ここか!」



姿は見えない、でもおそらくこの裏であろうという壁を見つけた。

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