あなたが私にキスをした。
このむこうにたぶん、トーコがいる。

それだけで嬉しくて、気を抜くと涙が出そうな気がした。



「トーコ、ちょっと離れてろ」

「えっ、何する気?」

「いいから!」



せっかく居場所がわかったのに、下手に動いてまたはぐれるわけにはいかない。

僕は思い切って、その壁に向かって突進した。

めき、と雪の壁が音をたてる。



もう少しだ。




もう一度、もう一度、と何度も壁に身体をぶつけてみる。




めきめきっ、とさきほどより少し大きな音がして「ズシン」と鈍い感触とともについに、壁が倒れた。




「トーコ!」

「ときわぁ…」



トーコの綺麗な目から、ぽろぽろと熱い涙が流れ出す。



「せっかくレイカさん見つけたのに…、だめだったよぉ…。それにっ、わたし考えなしで、飛び込んじゃって、迷惑かけて、ごめん…っ、ごめんねぇ」





叱られた子どものように泣きじゃくるトーコの背中を、優しくさすった。

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