あなたが私にキスをした。

――side ユヅキ



「ばっかじゃねえの」



雪まつり翌日。

冷やしたタオルを、熱くなった兄貴の額にのせながら俺は呆れたように言った。



「夜中に巨大迷路に入って、二人して出られなくなって3時間さまよった結果、仲良くそろって風邪引きました?…バカすぎる」

「おっしゃるとおり、返す言葉もございません…」



と、力なく兄貴が言った。



「トーコは?」

「となりの部屋でぐっすり寝てる。熱もとりあえず37度まで下がったからもう大丈夫だろ」

「そっか、よかった」



やっぱり、ばかだ。

さっきトーコちゃんの部屋に行った時、開口一番「トキワは?」って聞かれたことを思い出してまたムカついた。

ふたりそろって、相手の心配ばっかして、本当にばかみたいだ。

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