あなたが私にキスをした。
…考えてみれば当たり前のことだ。
だって僕は、出会った頃のレイカをモデルに彼女を彫ったのだから。
僕はコーヒーをテーブルに置くと、彼女の肩にそっと毛布をかけた。
そしてその隣に腰を下ろし、ほろ苦いコーヒーを口に運ぶ。
そうしていると、レイカとこの部屋で過ごした記憶が波のように押し寄せてくる。
――そんな苦いの、よく飲めるよね。
――まだまだレイカはお子様だな。
たわいもない会話が今となっては、こんなにも愛おしいのに。
こみ上げてくる涙をこらえていると、ふと、頬に細い指が当たった。
左を見ると眠っていた彼女が、心配そうな目で僕を見つめている。
「…大丈夫、泣いてないよ」
僕がそう言うと、彼女は安心したように頬を緩めた。
「コーヒー飲む?」
僕の質問に君は首をかしげる。
「こういうの」
すでに冷めてしまった僕のコーヒーを見せると、彼女はそれを受け取って自分の口に運んだ。
彼女の眉間に少しシワがよる。
「…はは、苦い?」
彼女は小さくうなずいた。
どうやら彼女の味覚も、レイカとお揃いのようだ。
「大丈夫。君の分は甘くしておいたから」
そう言って彼女の分のコーヒーを手にしたが、それはすでにぬるくなってしまっていた。
「ちょっと待ってて、入れ直す…」
僕がそう言って立ち上がろうとすると、
ぐっと
服のそでを彼女に掴まれた。