あなたが私にキスをした。

――怖い。本当は、ものすごく。




トキワと出会って、もう2ヶ月が経とうとしていた。

あの雪まつりの日にイオリさんと約束した大会も、いよいよ明日にせまっている。

昨日、ようやく作品の図面を完成させたトキワは興奮した様子で、私に見せに来てくれた。




大きく翼を広げる、美しい鳥の図面。

その迫力のある姿は、トキワにふさわしい作品だと思った。



なにより、このところ徹夜続きで図面を考えていたトキワが、こんなにも納得のいく表情を見せてくれたことが嬉しかった。



トキワはいつだって私に優しくて、私は彼のとなりにいられるだけで毎日幸せだった。

出会った頃は私を抱きしめる度に切ない顔をしていたトキワも、最近では心から笑ってくれることが増えた。




…それでも、時折夜になると、一人で物思いにふけっていることもあるのだけれど。




熱いシャワーを浴びながら、この「熱い」と感じられる感覚が、この先もずっと続くだろうかと不安になる。

時々、ほんの一瞬だけど、自分の身体が透明になったような感覚がある。その瞬間は音も、温度も感じられなくなって、視界すら薄ぼんやりとしてしまう。

でも、はっとして確認するときには、何の変哲もなくて、いつもどおりの私がそこにいる。


ただ、

不安と焦りで心臓はバクバクと音を立てているけど。

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