あなたが私にキスをした。
「だまって出て行ってごめんね」
レイカさんが言った。
「いいよ、何かそうしなくちゃいけない事情があったんだろ」
コーヒーをレイカさんに差し出しながら、トキワが答えた。
ダイニングテーブルに向かい合うように座る二人。だけど、どちらも視線を合わせようとはせず、なんだかぎこちない感じだ。
「トキワは、いつもそうだよね」
「どういうこと?」
「優しすぎるんだよ」
ぴり、と空気が凍てつくのを感じる。嫌な空気がただよっていた。
「決断が遅くなってごめんね。私達、別れよう」
レイカさんが、そう言った。
「別れる…?どうして?」
「私達、合わなかったんだよ」
「合わなかった?僕はそんなこと、一度も思ったことなかった」
「私は、あった。何度も、何度も。不安でこわくて、ずっとずっと考えていたの。あなたのもとを去るべきなんじゃないかって」
「そんな…」