あなたが私にキスをした。



片付けをしていた、レイカさんが、クローゼットの奥にある銀色の箱に気が付く。



あっ、と思った。

たしか、その箱は…。




「なにかしら」



そう言って、その箱を開けたとたん、レイカさんの目からボロボロと大粒の涙が溢れ出した。




二人がたどるはずだった、幸せな未来のためのエンゲージリング。

幸せそうに顔を寄せ合って笑う、二人の写真。




レイカさんはとても静かに、嗚咽をもらして泣いていた。


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