あなたが私にキスをした。

ついこの間まで手を伸ばせば届く距離にいたはずなのに、どうしてこんなに遠く感じるのだろう。

小さくなっていくレイカの後ろ姿を見つめて、僕はそんなことを考えていた。





ふと、

左手にあたたかい感触。




あぁ、そうか。君がいてくれたんだね。

何も言わずに、僕のとなりに並ぶトーコを見て、僕ははっとした。




トーコは、泣いていた。




どうして、君が泣くんだろう。

大丈夫だよ、トーコ。僕は悲しくないよ。

こうなることは、なんとなくわかっていたし、それはちょっとも寂しくないって言ったら嘘になるけど、

でも思ってたよりずっと平気なんだよ。




それでも君は泣いている。

顔をクシャクシャにして、ずっとずっと泣いている。



ばかだなあ、トーコが泣くことじゃないだろう。

ほら、僕は泣いてないから、大丈夫だから。



トーコが僕を抱きしめる。

トーコが泣いた時、僕がいつもそうするのと同じように、トーコが僕の背中を優しくさする。




大丈夫だって、泣いてないって。








泣いてなんか――。

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