あなたが私にキスをした。



「うっ、・・・ひっく、うぅう・・・っ」






耳のそばで、トーコのすすり泣きが聞こえる。





あぁそうか、と僕は思った。

悲しくないから泣かないんじゃなくて、君が泣いてくれているから、僕は――。




トーコを強く抱きしめる。




愛おしい、

と心の奥底からそう思った。

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