あなたが私にキスをした。
連れて行かれたのは、会場のメインスペースになる場所。前回大会の入賞者に与えられる場所だ。
「トキワ、あれ、見て」
トーコが指さした先にいたのは、イオリだった。
すでに氷の接着作業を終え、切り出し始めたというところのようだ。
「イオリの作品が、どうかしたのか」
「トーコちゃんがさ、兄貴の作品に似てるっていうんだよ」
「似てる…?」
たしかに、氷の並べ方や、形取りのしかたはよく似ているが、べつにそれはたいした問題ではない。
いや、でもまさか…?
「おや、これはこれはトキワくん。久しぶりだねえ」
僕らに気が付いたイオリが、不気味な笑みを浮かべてこちらに近づいてくる。
「敵の作品を視察かい?あまりいい趣味じゃないねえ」
「べつに、そんなつもりじゃ…」
「そんなに気になるのなら、見せてあげるよ。ボクの図面をさ」
そう言って、イオリが差し出したものを見て、
僕は言葉に詰まった。