あなたが私にキスをした。

ふつふつと、怒りがこみ上げてくる。



「…おまえ…っ」



気づいたら、イオリの胸ぐらを掴んでいた。慌てて、スタッフが駆け寄ってくる。僕はぱっと、その手を離した。

イオリが持っていたものは、間違いなく、僕の描いた図面だったのだ。




「何を怒っているのか知らないけど、まさか、視察に来てボクの作品をまねるのだけはやめてくれよ?」

「テメェ、よくもそんなことを…っ!!」


今度はユヅキが殴りかかろうとするのを、慌てて僕が止めに入る。




「…行こう、時間がもったいない」




そうだ、考えなくては。

この危機をどうやって乗り越えればいいか。

考えなくては。



イオリに背を向けて歩き出す僕に、慌ててトーコが駆け寄ってくる。




「トキワ、このままでいいの?このままじゃ…」

「どうしようもないだろ。あの図面が僕のものだって、証明できるものはなにもない」

「でも…」

「イオリが持っているのは、オリジナルの細かく描かれた図面だ。一方で俺が持っているのは、明らかに短時間で描いたとわかる、粗雑な図面。こっちのほうが圧倒的に不利だよ。訴えたとしても、疑われるのは僕のほうだ」




だから、考えるんだ。

どうすればいいのかを。




どうすれば、イオリに勝てる…。
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