あなたが私にキスをした。

怖かった。不安だった。

わけもわからず、家を飛び出していた。




彼とずっと一緒にいたい。

だけど、それは本当に彼にとって幸せなんだろうか。




家庭を持つということは、責任を負うということだ。

彼はきっと優しいから、私たちのために一生懸命稼ごうとしてくれるだろう。

安定した職を求めるようになるだろう。



だけど、本当にそれでいいの?

それは、彼の才能の芽を、私が摘み取っていることになるんじゃないかな。



そう考えたら、こわくてたまらなかった。

私は彼を愛していた。

彼自身も、…彼の才能も、全部。









だから決めたの。

私は彼の元から離れよう、と。

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