オトコなのにオンナ……なのにオトコ!?



本番当日。



「なぁ帝?これどこに売ってるんだ??」



これ、とは俺の唇にぬりぬりされてる黒い口紅。



「日本から取り寄せ」



「マジでっっ!!」


「ってこらあんまり動くな。綺麗な顔はいいけどイマイチ悪くなりきらねーな」



「樹はそのくらいがいいって。きっと男女関係なくファン増えるぜ??」



皐も普段のにぱっとした笑顔が嘘のように深いアイラインとファンデーションで妖艶に変身していた。



「皐~この靴歩きにくい」



「しゃーねーだろ?お前が小さいの気にしてるから買ってやったのに」



だからって厚底20センチは高すぎだろっ!!!



ライブハウスの楽屋……といっても小さいハコなので雑然と他バンドの奴らもうろうろしてるんだが。



さっきのリハでは実はテンパって歌詞が飛んだ俺。



本番大丈夫かよ?



不安で吐きそうになる。



「大事なのは心を込める事。間違いは恥じゃないさ」



そういう窮も最初はドラムを叩き間違えて散々だったんだ、と笑う。




俺達の出番は今回も最後。



最後の最後で「as」を歌う。



何も出来ない俺から



大切なアズへ。



心を込めて……歌います。



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