空の王冠
「髪を切って欲しいの」

ユーシアがメイドに頼む。
でもそれはいつも許可されない。

本当は先生がこっそり見せてくれた
ショートカットとやらにしてみたいのだが。
ユーシアは髪を切るのにも
許可がいる。

それは時々ユーシアを眺めにくる
初老の男性だ。

ユーシアの祖父。
名前は知らない。
誰も教えてくれない。

いつもじーと、ユーシアを眺めあと
つまらなそうに
帰っていく。

ユーシアは二度と来なければいいのに
と思いながらも
唯一の肉親を心待ちにもしていた。
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