四色恋模様
「なに?」
黙ったままになってしまった結人に向かって、少し棘のある声で聞いた。
結人はハッとしたように私の手を離した。
「いや、今朝はついカッとなっちまって…。だから悪かったよ」
ぽりぽりと頭をかきながら気まずそうに目をそらして結人は謝ってきた。
「別に、いいけど」
それだけかい。
私は結人がそれ以上話さない事からもう終わったと思って前に向き直って歩き出した。
「ああ、それとさ!」
後ろからまた声をかけてきた結人にもう一度足を止めて振り返る。
「話すな、なんてうそだから。ごめん」
そう言うと結人は珍しくペコッと頭を下げて光の速さでグラウンドの方に戻って行った。
え…?な、何が起こったの…?
信じられない現象を見て1人で固まっていた。
結人があんな風に謝るなんて…明日雪?!
まだ夏休みにも入らないのに、私は本気でそう思った。
やっと硬直した状態が解けて私は足を動かした。
意外にも、私冷静だな…。
告白されたのに。
でも本当に?私の勘違いだなんてないよね…。
教室での光景がまだ頭の中で繰り返し繰り返し流れている。
まるでビデオのように、見ては巻き戻し、見ては巻き戻しを繰り返しているみたいだ。