四色恋模様




「はい、1年3組の皆さんおはようございます。担任の上島です。残念ながら、体育館が工事中なので入学式は教室での放送になります」



教壇に立っているの、上島と名乗るちっさなおじさん。


ん〜…国語教師っぽい。



「では、放送が流れるまでしばしお待ちを」



上島先生はそう言うと何やら作業をし始めた。
もちろん、このまだ顔もほとんど知らない人達ばかりの教室で喋り出す勇気のある人はいない。




流石に、さっきまで多少賑やかだったけどそうはいかないみたいだ。

私は舞花がいるからいいんだけど…。



沈黙の流れる教室に、ピーンポーンパーンポーンと放送が流れるアイズの音がした。




『皆さん、おはようございます。桜第一高校の校長、水島花苗です』



透き通るような女の人の声にドキッとした。
校長、女の人のなんだ!






校長の挨拶が進み、私達はしばらくそれを聞いているだけだった。

長すぎず短かすぎず、校長先生の声は素敵で、早くどんな人か見たくなってしまうほど魅力的な声をしていた。



「では、ここからはホームルームになります。明日の持ち物だけどー」



上島先生は持ち物や注意事項をペラペラと話して「んじゃ、終わりね」と一言いって教室から出て行ってしまった。



「え、か、帰っていいの?これ」



私は後ろにいる舞花に小声で尋ねた。

「さぁ?分からない…」


舞花も困ったような声で曖昧に答えた。

周りも同じように後ろや隣の人と首を傾げあっている。


でも、予定には入学式からのホームルームで終わってたからな〜。

帰ってもいいかなー、なんて思っているとガタッと椅子が動く音がした。



それはせいが席を立った音で、それに合わせて一瞬静まった教室も皆んなが席を立つ音で賑わっていく。




「帰るぞ」


せいはこっちまで来ると私と舞花に向かってくいっと顎で廊下をさした。
その通り、帰るぞというアイズ。



「うん、帰るけど…結人待ってなきゃじゃない?」



「ああ、そうだな」




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