四色恋模様
「え?!あんな優しそうな顔してるのに?いかにも特別そうじゃん」
今日のせいの顔を思い出しながら結人に言う。
しかし、結人はう〜ん、と唸ってあまり私の意見には賛成ではないみたい。
「確かに優しい顔するけど、せいは誰にでも優しいから。好きな人にはもっと違うんじゃない?」
「え、あり得ないくらい優しいってこと?」
私の真面目な言葉にまた結人は吹き出した。
「いや、そうかもしれないけど!好きな人には優しさだけじゃないかもってこと」
「はぁ?どういうこと?」
結人の言ってることが理解できない。
もっとちゃんと、答えを言って欲しいわ…。
「まぁ、それはせいに好きな人がいたら見てたらきっとわかるよ」
結人はそれだけ言うと、じゃーな、と言って家に向かって行ってしまった。
なにそれ…。さっぱりわからない。
けど、せいを観察してれば分かるかな?
私も家に帰ろうっと。
私はガチャっと家のドアを開けた。
「ただいま〜」
まだ親は帰ってきていないからシンとしている。
好きな人かぁ…。私は制服から部屋着に着替えながら考えていた。
私の初恋は小学校の先生だったしなぁ…。
私は恋愛経験値がなさすぎて何も分からないや。
この時、新しい春の色が私達の心に色づき始めていた事に、私はまだ気づいていなかった。