四色恋模様
ビシッとそう言うと、今度は桃が視線を彷徨わせる番だった。
「いや、ちょっと星太君に聞きたい事があって…」
桃は語尾を小さくして曖昧に言う。
「なに話してたの?」
普通に聞いてしまっていた。ただの素朴な疑問。
だけど心の中は妙にザワザワしていて落ち着いてくれなかった。
「体育祭の種目のことで。男子の方はどうなってるのかなって思って」
今度は迷う事なく桃はそう言った。
「そっ…か…」
何となく腑に落ちないまま、私は頷いて自分の席に戻った。
だって、そんな事廊下を一緒に歩きながら話す事なのかな?
頭の中で桃と一緒に歩くせいの顔が忘れられない。
あんな、顔を赤くして恥ずかしそうにしているせいを私は知らないもん。
今まであんな顔見てきたっけ?
…忘れちゃった。
席についてギュッとスカートを握りしめる。
どうして今更こんな事考えてるんだろ。
高校生になって知らないせいを見てるからかな?
モヤモヤする心に合わせてキュッと胸が苦しくなった。