四色恋模様
「いい?男子は星太君がアンカーをやるの。その一個前をななにしたからちゃんとバトンを渡すのよ」
桃はヒソヒソと耳元で小声でそう言った。
「は?せいとかどうでもいいから、今は私が辞退するのが最優先なの!」
桃からクラスの50メートル走のタイムが乗った紙を奪う。
「ちょ、返して!先生からあんまり見せるなって言われてるんだから!」
私から紙を奪おうとする桃はぴょんぴょんとジャンプする。
残念、身長168もある私には届かない。
「え〜と、どれどれぇ?私は…」
女子のタイムを速い順に数えていく。
「私は〜……え?!5番目?!」
驚きのあまり大声で叫んでしまいクラスの視線を浴びることになった。
嫌な事にバチっとせいと目が合う。
その目は何やってんだお前、と言いたげだった。
「そうよ。6番以内に入ってるし、そこまで遅いわけじゃないんだよ、ななは」
私から紙を奪うことを諦めた桃は腕を組んで私を見上げている。
「はぁ…。でも1番なんて嘘つく事ないじゃん!」
「そうしなきゃななやらないでしょ」
即答で帰ってきた。
確かに…それもそうなんだけど。
5番といえ微妙な数字なら他の人にお願いするよ。
「ってことなので、当日頑張って〜」
桃は全く悪びれる様子もなく私から紙を取るとどこかえ行ってしまった。
こんな事があったのはつい一昨日。
「あ〜最悪最悪!バトンの練習とかやったけど不安〜!」
最後の種目になるのでそれまで心臓がもつか…。