狐と嫁と溺愛と
正直、妖のことはよくわからない。



大河さんを怖いと思うときもあるし、さっき会った夢さんも怖いと思った。



「女郎蜘蛛の夢さんに…会ったの…」

「夢に?他は?」

「会ってない。優しかったけど…怖いと思っちゃって…」

「ん」

「食べられちゃうんじゃないかとか、妖から見れば、あたしはなんなんだろうとか…。わからなくて、怖い」

「わかった」



行きたくないわけじゃない。



ただ、本当に怖いだけ。



「夜メシの時間だな。着替えるから先に食っとけ」



悲しそうに笑った大河さんは、部屋を出て行った。



気分悪くさせちゃったかな…。



あたしにはまだ覚悟がないのかもしれない。



大河さんの奥さんという自覚も、旦那が妖だという事実も、受け入れられてないのかな…。



なんの覚悟も、できていない。



お母さんからもらった石が入ってるネックレスを握る。



癖のようになってるこの行動は、なぜかあたしに安心感をくれる。



お母さん、どうしたらいいの?



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