狐と嫁と溺愛と
ゾクッと背中に走った寒気。



あたしの隣にいたはずの大河さんが、いつの間にかシキくんの目の前。



「これは手を焼くのがわかる。自分が何者なのか、理解が足りないようだな」

「うぁっ…」

「振りほどいてみろ。ただのキツネなんだろ?俺は」



大河さんの尻尾がシキくんに絡みついていて、徐々にキツくしまっていくのがわかる。



大河さんが、怒ってるんだ…。



「このまま絞め殺してやろうか?それとも、冷たい炎に焼かれてみるか」

「はな、離せっ‼︎」

「自分がなんなのか、なにをすべきか考えろ。そして、弱さを知れ。調子に乗るのも程々にしないと、痛い目みるぞ」



尻尾の締め付けが緩んだと思ったら、シキくんはガタガタ震えていた。



ただのキツネと言った大河さんに、手も足も出ない…。



「お前は妖だ。人間より力が強い。その力を使いすぎると、後悔することになるぞ」

「は、い…」

「わかればいいんだ。俺は遊鬼と椿の悲しむ顔は見たくないからな」



ふたりのために…。



< 164 / 582 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop