狐と嫁と溺愛と
母親はあたしがまだ小さい頃に男を作って出て行った。



そのせいで父親とふたりで暮らしていたわけだけど。



「えっ?記憶ない?お前、カナの連れ子じゃん。3歳くらいの時再婚したの」

「全く記憶にないけど…」

「俺の歳考えてみろよ。お前、16で産まれてることになるじゃん」



確かに若い父親だとは思ってたけど…。



あたしは今の今まで、本当のお父さんだと思っていたんですけど…。



参観日とか来てくれた記憶もなかったけど‼︎



「だからって売ることないじゃん‼︎」

「風俗に売るわけじゃねぇだろ」

「なっ⁉︎娘になんてこと言うんだ‼︎」

「だから娘じゃねぇって」



ひどい…。



ひどすぎる‼︎



最大限に重要なことをサラリとカミングアウトされた後に売り飛ばされるなんて‼︎



「出てってやるから‼︎」

「ムリだろ、こんな大雪の日に」

「売られるくらいなら死んだほうがマシ‼︎」



勢いで家を飛び出した。



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