狐と嫁と溺愛と
悔しいけど、この腕の中がいちばん落ち着いてしまうんだ。



「ごめん」

「謝ってばっかり…」

「いや、実際ここ数日、マジで放置してたなって。寂しかった?」




本当に反省してるのかはわからないけど、今動けないこの体でケンカなんてしたら気まづいだけ。



だから大河さんの問に小さく頷いた。



「そうかそうか、カワイイヤツめ」



返答がお気に召したのか、上機嫌の大河さん。



あたしの言いたいことは言えたような気がしないけどね。



その時、珍しくノックの音。



「ん?高島だな。入れ」

「失礼します。当主様、急ぎお耳に入れたいことが」

「なんだ?」

「タマキ様が…行方不明だそうです」



えっ?



タマキさんって、お父さんの彼女で、大河さんの妹の…?



「は…?」

「別邸を管理しているリンからの連絡です。『探したら殺す』とだけ置手紙をして、消えてしまわれたと…」

「ほっとけ。どうせジロー絡みだろ」



まさかお父さんとケンカしたとか?



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