狐と嫁と溺愛と
高島さんに屋敷を任せて、あたしと大河さん、お父さんの3人は明け方の外へ。



「行ってらっしゃいませ」

「ん、任せたぞ。なにかあれば連絡してくれ」



庭にこんな場所があったなんて、知らなかった。



人がひとり通れるくらいの小さな鳥居。



こんなの、あったんだ…。



「ここを通ればあっちの世界だ」

「う、ん…」

「大丈夫か?」

「大河さんと一緒だから…平気」



ニコッと笑った大河さんに手を握られ、いざ妖の世界へ。



ただ通っただけ。



本当にそれだけ。



なのに、そこにあったはずの屋敷が、洋風から和風へ変わっていた。



「なにっ、これ…」

「こっちの世界の本邸。俺は別邸って呼んでるけど」

「すごっ…」

「行くぞ」



一瞬で妖バージョンになった大河さん。



しかも、服まで着物に変わっている。



後ろを向けば、お父さんが見慣れぬ姿になっていた。



黒いフワフワの髪に、黒い耳。



真っ黒な着物姿に、真っ黒な尻尾。



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