狐と嫁と溺愛と
すべてが黒くて…。


「死神みたい」



本当にそう思った。



いつもの緩いお父さんじゃない。



あぁ、この人も偉いんだ。



「死神とは、的確なあだ名だな、ジロー」

「まぁ、そう呼ばれてもしかたないかもしれないですね〜」

「ナナは死神の子どもってことか」

「ある意味神の子じゃないですか」



笑いあうふたりだけど、冗談に聞こえないあたし。



こっちの世界は、あっちとどれほど違うの?



大河さんについていき、初めて足を踏み入れた別邸。



「おかえりなさいませ、当主様。ジロー様も、お疲れ様です」

「ナナ、こいつがこの屋敷の…高島みたいなヤツ。蘭月(ランゲツ)だ」

「お初にお目にかかります、奥方様のナナ様ですね。お会いできる日を楽しみにしておりました」



丁寧な挨拶をしてくれた蘭月さんは、黄色い髪に、黄色い耳。



大河さんより若いかな?



すっごくキレイな男の狐さん。



< 214 / 582 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop