狐と嫁と溺愛と
頭を下げてから、促されるまま座敷に入った。



すごく広い…。



「進展は?」

「いえ、なにも…」

「そうか。俺とジローは交渉に行く。蘭月はナナを頼む。どれほどかかるかわからないけど、ここにいれば安心だからな」

「承知しました。護衛を数人連れて行かれますか?」

「いや、いい。なにかあっては困る。屋敷とナナの安全確保が優先だ。穏便に済ませたいと思ってるしな」

「では、お気をつけて行ってきてください。私どもは、全力で奥方様をお守りいたしますので」



安全な場所って、そういう意味だったのか…。



大河さん、行ってしまうんだね…。



知らない場所で、不安だよ…。



「大河さん…大丈夫?」

「ん、なにかあっても、俺は負けないし、ちゃんと帰る」

「約束だよ…?」

「ナナはここから出るなよ?帰ってきたら、お前のこと、両親に紹介するから」

「わ、わかった…」

「蘭月、ナナに着る物を。こっちの世界で作られた布を使ってるヤツな」



人間の臭いが消えるんだって。



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