狐と嫁と溺愛と
大河さんとお父さんが出かけて行ってしまってから、あたしは違う部屋に案内された。



時代劇の世界に来たみたい。



家具や作りが、テレビで見るような昔のものばかり。



「こちらは奥方様のお部屋でございます」

「あ、あたしの…?」

「こちらにいらした際は、この部屋をと、当主様がご用意された部屋ですよ」

「あたしの部屋だなんて、もったいない…」

「そんなことありません。ナナ様は大事なお人ですから」



なにもしてないのに尽くされてる気分。



あたし、こんな大それた立場の人間じゃないんだけどな…。



「こちらの着物に着替えていただけますか?」

「わぁ、カワイイ‼︎」



こんな本格的な着物、着たことない‼︎



薄いピンク色で、桜の花が散りばめられたデザイン。



「着替えが終わりましたらお声がけください。私は部屋の外で待機しておりますので」

「わかりま…」

「どうかしましたか…?」

「自分で着れないです…」

「左様でございますか。では、侍女を連れて参りますので、お待ちください」



お恥ずかしい…。



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