狐と嫁と溺愛と
パーティー会場はとてつもなく広い部屋。



結婚式の披露宴なんかもできるみたいで、このホテルの最上階にはチャペルもあった。



おじさんやおばさん、若いサラリーマン風の男の人、おじいさん、モデルのような女性。



いないのは子どもだけって感じのこの空間。



どれほどの人数を招待したんだろう…。



「奥様はこちらへ。春乃様は副社長といてください」



千尋さんにそう言われ、春乃はウキウキ。



あたしは千尋さんに連れられて大河さんに近づくたびにドキドキ。



大河さんの株を下げるようなことはしちゃいけない。



そう思えば思うほど、喉が渇いていく。



「緊張してんのか」

「し、してるよ…」

「お前とのことはここにいる妖は知ってる。ナナはしゃべらなくていい。俺がいちばん偉いし?」

「でもっ‼︎変なこと言わないようにする…」

「そうしてくれ。じゃ、始まるから待っとけよ?」



ポンっと頭の上に乗った大河さんの手に安心する。



任せておけとでも言うように、笑顔を向けてくれて。



うん、黙って笑ってるね。



そう思ったら、なんだか緊張が解けてきた。


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