狐と嫁と溺愛と
そんなことはわかってる。



でも、春乃は何も言ってないし、そんなそぶりも見せなかったし…。



「親が黙ってるのかもな。それか、故意にお前に打ち明けられないでいる」

「そんなのウソだよっ‼︎春乃は…人間だよ‼︎」

「俺が人と妖を区別できないわけないだろ。俺は妖の中でも妖力が強い」

「信じ…られない…」

「ナナが思ってるのより、この世に妖は多いんだ。妖を見る目を、お前にやろうか?」

「なに…それ…」

「まぁ、それは家に帰ったら。で、俺は疲れた。力を分けてくれ」



そう言って近づいてきた大河さんを拒否してしまった。



春乃のそんな話を聞かされて、すぐに切り替えられるわけない。



今は…そんな気分になれないよ…。



「ごめん…なさい…」

「…………なんで?」

「そういう…気分に…なれない…」

「意味わからん」



ムスッとした大河さん。



でも、今はムリだよ…。



「混乱してる…から…ムリ…です…」

「そ…。風呂入ってくる」



大河さんにあたしの気持ちはわからない。



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