狐と嫁と溺愛と
熱帯夜なんて、ここにはないからね。



麦茶を飲んだ後、待ちきれずに玄関から外へ出た。



早く帰ってこないかな…。



自分がこんなに寂しがりやだったなんて、全く知らなかった。



誰かを好きになると、不思議なことに新しい自分が発見される。



とにかく、今は大河さんに会いたい。



しばらく玄関付近をぶらぶらと歩いていた。



車のライトがこっちに向かってくるのが見える。



大河さんの数ある車の中で、いちばん高級っぽいヤツ。



だけど、運転しているのは千尋さんだった。



「社長、明日は9時出勤ですので」

「あいよ、お疲れ〜」

「あっ、奥様」

「へっ⁉︎ナナっ⁉︎」



ペコっと頭を下げた千尋さんは、そのまま車を運転して帰って行った。



うわぁ、なんだか泣きそうだ…。



「なんでこんなとこにいんの」

「大河さんに…一瞬でも早く会いたかった…」

「どうした?」



抱きついたら涙が溢れて止まらない。



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