狐と嫁と溺愛と
大河さんは優しい。



「好きだよ、大河さん」

「ナナ…もっと妖力をくれ」

「あげない。大河さんが誰かを傷つけるから、だからあげない」

「そうか、ならお前はもう…いらない…」



そう言った瞬間、大河さんがぱたりと倒れた。



おじいちゃん先生が隙を見て注射を打ったんだ。



ドクンドクンと、心臓から音が聞こうそう。



「化け物かよ…」

「おや?鬼の小童か?随分とムリをしたな」

「本気で殺されるかと思った。やべぇよ、大河様。俺を攻撃して、楽しんでた」

「今は扱いきれないほどの妖力に呑まれてる。莫大な力を得た対価じゃな」

「じいさん、医者か?ちょっと、腹見て。穴空いてると思う」

「部屋を変えるとするか。鬼の小童、再生能力はないのか?」

「ねぇよ。いてぇ〜…」



大河さんをベッドに担いだ志鬼くんは、お腹を押さえて部屋に戻った。



その瞬間、ふっと力が抜ける。



「ナナ様っ‼︎」

「ご、ごめんなさい…。あたし、今日はここの部屋で寝ます。高島さん、お疲れ様でした」



泣きそうな顔をした高島さんが頭を下げて出て行った。



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