狐と嫁と溺愛と
15年ぶりの大雪で、外には足元が埋まるくらいの雪。



家出…できないかも。



「諦めて家入れよ、ナナ」

「う、ん…」

「俺と一緒にいたって、学費払えないよ?」

「甲斐性なし…」

「うん、そうだな。だから、売られっ、じゃなくて、華山家に嫁げ」



涙も出なかった。



父親だとは思ってた人が父親ではなくて、あたしを育ててくれたその人はあたしが厄介になったんだ。



適当な父親だと思っていたけど、あたしにはお父さんしかいなかったのに。



あたしの学費を払うために借金して、その借金の相手から持ち出された縁談の話。



それを勝手に受けてきた保護者のこの男。



今まで育ててもらった恩は、返しきれない程あるのに。



「お世話になりました…」

「おぅ、幸せになれよ〜」



涙も出ないまま、あたしは父、いや、保護者の手を離れて顔も年齢も知らない人と結婚することになった。



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