狐と嫁と溺愛と
今の大河さんには、罪悪感しかない。



本当に優しい人だ。



大河さんの心が、絶対傷ついている。



「当主様が私などに頭を下げる必要はありません」

「俺の気がすまない」

「お気持ちはわかります。ですが、当主様には堂々としていてもらいたいのです。何があろうと、前だけを見て突き進む。それが、私が使える当主様です」

「高島…俺は…」

「弱々しいあなたなど、見たくないのです。どうか、どうか…謝るなんてやめてください」



高島さんの気持をムダにしないように、大河さんは頷いた。



こんなにみんなから信頼されてる。



それは大河さんの本質を知っているからだよ?



あなたが、妖狐の当主だからだよ。



間違わずに、歩き続けてほしい。



本気でそう思った。



「当主様?もう歩けるのか?」

「じいさん、俺はお前に何かしたか?」

「されておらんよ。それにしても、よく立っていられるものだ」



大河さんに打った薬は、おじいちゃん先生が調合した麻酔のようなもの。



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