狐と嫁と溺愛と
目を開けると、大河さんの顔があった。



抱きしめられてることに気がつき、さっきの出来事を思い出す。



あれから時間が経ってないんだろうか…。



違う、ここ、あたしと大河さんの寝室だ…。



「ずっと抱っこしてたの…?」

「離したくなかっただけ」

「うん、心地いい…」

「熱がある。酒なんか飲むから、余計悪化したって」

「そっか…そっか…」

「苦しいか?」

「苦しい。胸が…苦しいよ…」



着物の帯を解かれた。



そういう意味じゃないのに。



心配そうな大河さんの顔を久しぶりに見て、なんだか嬉しくなった。



「どうした?」

「いつもの大河さんみたいだって、思ったの」

「悪いな、戻らねぇ」

「もういいよ、もう、諦める。大河さんがこのままでも、あたしは大河さんを嫌いになれない。あなたの狂気は全部あたしにぶつければいい。殺したっていい、傷つけたっていい。だから、他の人に手を出すのは…イヤ」



強く抱きしめられた。



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