狐と嫁と溺愛と
もうなんだっていい。



この温かい腕が戻ってきたんだ。



しばらく抱きついて泣いた。



「あっついわね〜、春乃さん」

「そうですね、タマキさん」

「身内のああいう姿を見るのは微妙な心境になるのだけれど」

「そういうものですか?」

「えぇ、兄様、病み上がりのナナちゃんをまた床に沈めるようなことはしないでね?」



へっ⁉︎



なんか恥ずかしい発言されてない?



大河さんの胸から顔を上げると、タマキさんと春乃、リンさんが笑っていた。



「リンさんっ‼︎元気…?」

「はい、体は丈夫なので。いい稽古になりました、当主様」

「殺されかけて、なに言ってんの‼︎」

「はははっ、そうでしたっけ?」



楽しそうなリンさんは、大河さんにされたことなんて笑って水に流してしまう。



これが忠誠とか、信頼の表れなんだろうか。



「当主様、ユキのお家に来るって約束は?」

「ん?あぁ、そうだった。お姫様を寝かせてくるから、ちょっと待っててくれるか?」



コクッと頷いた子狐ちゃんに手を振り、大河さんに抱っこされたまま部屋へ戻った。



< 355 / 582 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop