狐と嫁と溺愛と
それを邪魔するのは、蘭月さんの小さな声。



「当主様、お休みのところ申し訳ございません」

「なんか…あったか…?」

「街で乱闘騒ぎがありまして…」

「そうか、出る」



あたしを腕から布団におろし、頭を撫でた大河さん。



静かに開いた襖から、蘭月さんが大河さんの着替えを持っている。



そいうことも大河さんの仕事なの?



「どんな状況だ?」

「酔った天狗の若いのと、妖狐のケンカでして…。その天狗がアズマ様の護衛のひとりだということで。あちらが出てきます」

「なんで俺のテリトリーで飲んでんだ…。アズマが出るのか、めんどくさい…」

「いかがしましょう」

「リンは屋敷に残す。他、お前も含め3人でいい。ここに戦力を残したい」

「かしこまりました」



着替えた大河さんは、またあたしの頭を撫でた。



寝たふりしちゃってるけど、気づかれてないよね…?



「早く片付けてくる」



そう言って、頭にチュッと…。



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