狐と嫁と溺愛と
行かないで。



危ないことはして欲しくない。



そう思っても、これが大河さんのこちらでの役割なんだろう。



黙って見送るよ。



気をつけて、行ってらっしゃい。



閉まった襖を眺め、不安でいっぱいの胸に手をやる。



お母さんからもらった石の入るネックレスを握り、何もないことを祈るしかない。



そのまま眠れず、明るくなってきた外に目をやった。



障子を開けて、庭に降り立つ。



こっちも夏。



暖かくて、気持ちいい朝…。



早く帰ってきて、大河さん…。



「うおっ‼︎」

「ぎゃっ‼︎」

「お、奥方様でしたかっ‼︎失礼いたしました…」

「び、ビックリしたぁ〜…」

「こんなに早く、どうかされましたか?」



何事もないようなリンさんの顔。



ビックリして変な声出たじゃん。



リンさんもビックリしてたけど。



あれ、いつもポーカーフェースのリンさんからは想像できない声だったな…。



春乃に聞かせたかった。



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