狐と嫁と溺愛と
なんて、心で笑っていたら不思議そうな顔をされた。



「あっ、大河さんがいなくて起きたんです」

「そうでしたか。朝稽古でもしてらっしゃるんじゃないでしょうか」

「朝稽古ね、そうですね。ウソがヘタ…」

「えっ…」

「いいんです。大河さんは、汚いものは見せたくないんだろうし。知らなくてもいいことなんでしょ?」

「えぇ、そうです。当主様が見せたくないものは、あなたは見なくていい。愛されてる証拠です」

「ふふふっ、そうだね」



それでいいよ。



それからしばらく、屋敷がバタバタし始めた。



玄関へ向かうあたしを、いろんな狐さんたちが阻止しようとする。



必死な姿が面白い…。



なんて言っちゃいけないんだろうけど。



あたし、守られてるだけのお姫様はイヤなの。



「ナナっ⁉︎」

「おかえりなさい、大河さん」



笑ってそう言うと、周りが静かになった。



大河さんの覚悟とか、やらなきゃいけないこととか。



あたしも一緒に背負いたいんだよ。



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