狐と嫁と溺愛と
口止めしたのは大河さんだろう。



もしかしたら、あたしを止められなかった狐さんたちが怒られるかもしれない。



そしたらごめんなさいするから…。



近づいてきた大河さんは、ポンポンとあたしの頭に手を乗せた。



「ただいま」



笑ってくれた大河さんに飛びつく。



これでいいんだよね?



あたし、間違ってないよね?



これがあたしの覚悟だよ。



「熱烈な出迎えは嬉しいんだけどな…。風呂に入ってきていいか?」

「うん…?ん…?」

「リン、風呂に入る。蘭月は今日使いもんにならないからな」



ちょっと待って。



あたしの横を通り過ぎようとした大河さんの腕を捕まえた。



何事かと、振り返った大河さんからは、やっぱり血の匂いがする。



「ケガ…してる」

「してない」

「してるっ‼︎大河さんの匂いがするもんっ‼︎」

「してないって言ってるだろ?俺は風呂に入りたいんだ」



不思議とわかるんだ。



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