狐と嫁と溺愛と
だけど、急に襲った安心感。



ゆっくり、ゆっくりと、大河さんの呼吸に合わせて息をする。



「そうだ、落ち着け…」



長いこと抱きしめられていた。



やっとまともに息ができて、涙目で大河さんを見上げる。



「ムリするな…」

「ごめっ…なさい…」

「喋らなくていい。って、濡れたな…」



大河さんに抱きしめられたせいで、あたしの着物も濡れていた。



もう、大丈夫。



大河さんの腕を抜け、自分で立つ。



「着替えるね」

「大丈夫か?」

「うん、たぶん…」



心配そうな大河さんを残し、お風呂を出た。



大河さんの血が、着物に着いていて、ジワッと溢れた涙。



大河さんが傷つくのは、自分が傷つくより痛い。



それを初めて知った。



「奥方様っ、大丈夫ですかっ⁉︎」

「あっ、雫ちゃん…。ごめんなさい、着物汚しちゃって…」

「そんなこといいんですっ‼︎着替えましょう」



雫ちゃんに連れられ、自室に戻って着物を脱いだ。



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