狐と嫁と溺愛と
雫ちゃんにお礼を言って、ゆっくりと廊下を歩き、朝食の準備がされている座敷にやってきた。



「ナナ、キレイ‼︎」

「そ、そうかな?雫ちゃんがやってくれたの…」

「ノーメイクでもカワイイくせに、化粧なんかしたら益々カワイイじゃん。あたしもしようかな?」

「春乃はそのままでも超美人だから」



気分が暗くならなくて済んだのは、春乃が一緒にいて、常に話しかけてくれたからだろう。



あたしは一度も大河さんを見れず、そのまま朝食を終えた。



半分も食べられなかった食事は、病み上がりのせいにして。



食後はタマキさんの部屋へ逃げるようにやって来た。



「兄様とケンカでも?」

「違います。そういうんじゃなくて…」

「昨晩の一件かしら?兄様が蘭月を庇ってケガをしたとか」

「そうだったんですか…」

「そんなの、いつものことよ」

「怖かったんです…。大河さんが傷つくのが…」

「そうね、そういうものだわね」



好きな人の傷は、やっぱり辛いとタマキさんも言った。



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