狐と嫁と溺愛と
どうやらお父さんはこっちでは相当腕の立つ妖狐らしく、戦いでは常に前線に立つと。



「まぁ、ジローは戦うことが好きだし、冷酷なところがあるから。兄様の為なら、なんだってするような男だしね」

「大河さんのためなら…?」

「兄様がジローに殺せと命じれば、ジローは喜んで相手を殺す。あなたのことも、兄様からの指示だったし」



そうか、だからあたしはお父さんと暮らしていたんだ…。



大河さんのために、貴重な時間をあたしに割いていたんだ。



「普通、上の者は守られることはあっても、下の者は守らない。兄様は違うけれど」

「…………」

「兄様が蘭月を助けたのは、兄様が優しいからね。大事にしてるのよ、私たちのことを」



それを聞いて、すごく嬉しかった。



大河さんは、完全にあたしの力に打ち勝ったんだと。



だけど、ケガをするのは…やっぱり怖いよ…。



「ナナちゃん、兄様の妻なら、目を瞑っちゃダメ。それが、当主の花嫁の役目よ。弱音を吐くのは、影でやりなさい。あなたの気持ちや行動は間違ってない」



やっぱり、涙が止まらなくなった。



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