狐と嫁と溺愛と
起き上がったあたしを、腕の中に閉じ込めた大河さん。



「行かない。悪化したら困る」



拗ねたようにそう言われた。



大河さんがお祭りに行けば、確実に騒がしくなるし。



あたしも一緒なら、余計に騒がれるだろうって。



「行きたいよ、大河さん…」

「来年な」

「そんなに待てない…」

「次の年なんて、すぐだ」

「やだぁ〜…。りんご飴とか、綿あめとか‼︎甘いおいしいの食べたいもん‼︎」

「駄々っ子か」

「ぶぅ〜…」

「花火はここから見える。それで許せ」



困った顔でそう言われたら頷くしかなくて。



さよなら、甘いもの…。



用意された豪華な夕食を食べ、縁側にふたりで座る。



「月の雫です」

「わぁ‼︎この前のおいしいやつ‼︎」

「お気に召しましたか?よかったですね、当主様」



透明な中に黄色い桃が入ってる食べ物。



確か、大河さんが好きだっていう。



「これ、この前も食べたらすっごく美味しかった‼︎」

「そうか、甘いだろ?」



あっ…甘いものね…。



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